秘伝 大学受験の国語力 (新潮選書) (新潮選書)
- 石原 千秋
- 新潮社
- 1260円
livedoor BOOKS
書評/教育・学習
私も30年程前、人並みに受験勉強に励んだ。
尚、この「人並み」には「一浪」も掛けている。(笑)
ただ、勉強そのものは嫌いでなかったので
世間で言われるほど、「灰色」でも「憂鬱」でも
なかった。
文系だったが、実は一番の苦手教科は「現代国語」だった。
本書でも触れられている「新釈現代文」も読んでみたが
全く何のことか意味がわからず、「右から左へ」
受け流していただけだった。(×_×)
「Z会」も挑戦したが、基礎力のない者には
手に負えるはずもなく、無惨な玉砕を遂げた。
浪人時は、ワラにもすがる思いで堀木先生の授業を受講したが
解説されればわかるものの自分自身で
納得して解けるというレベルまではついに到達できなかった。
そんな悲しい思い出がある教科である。
結局、コストパーフォーマンスが悪いのだ。
歴史や英語のように掛けた時間の分だけ
きちんと点数でかえってくればやりがいもあるのだが
「現国」は私にとっては、そういう科目ではなかった。
仕方なく、小西 甚一先生の「古文研究法 改訂版」
を1冊仕上げ古文でほぼ満点を取って、
現国の点数のムラを補う作戦を
とるほかなかった。
閑話休題。
さて本書。
前半では戦後の大学受験国語の傾向を俯瞰し、
後半では問題を実際に解きながら
現在の大学受験問題の特徴を明示する。
「国語は道徳である」という主張する。
小説の答えは「自由に読む」のではなく、
「学校空間にふさわしいようによむ」のが正解。
つまり「個性」を試しているのではなく、
昔あったテレビ番組「クイズ100人に聞きました」
のように世間の平均値を知っているかを問うている、
という指摘は、まさに目から鱗。
「評論文」も「小説文」の読解同様
基本の鉄則を1つだけ掲げ、それに従って解説していく。
何十もの公式を覚えさせるようなこともなく
参考書にありがちな「はじめに答えありき」式で
ないのもよい。
前述書「古文研究法」ほど学究的ではないにせよ
条理明晰に受験問題を分析し、解説している。
文章も硬軟織り交ぜながらとても読みやすい。
この理論で数年後、息子の受験問題を
教えてみたい、そう思わずにはいられない本。
受験生はもちろんだが、大人が読むと一層おもしろいだろう。
「現国」ってこういう科目だったんだ!、
と改めて目が開かれるに違いない。
コメント
コメント一覧 (4)
> 私はここ2ヵ月程ご無沙汰してしまっています。
私など見てみたら、何と5ヶ月ぶりでした。
以前だいぶキツイ本を選んで以来
安易に選ぶとあとで書評を書くのが
とんでもなく苦痛になることを痛感したので
本当に興味のある本しか選ぶのを止めました。(笑)
> 今回の本は非常に役立ちそうな気がしました。
確かにおもしろい本ではあるのですが
本書で扱われている「国語力」はあくまで
「入試における」国語力を扱っています。
著者はそれの限界を承知しつつ論じています。
ですので、つぶ庵さんが求めている
「文章を書く」能力=国語力
という視点では書かれているわけでは
ありませんので、その点はご承知おき
下さいね。
その点を割り引いても十分楽しめる本では
ありますが・・・(^_^;
mummykinoiさんは、
工業高校の先生をされてらっしゃるのですね。
エントリーも大変興味深く読ませていただきました。(^_^)
mummykinoiさんがおっしゃるように
本書は「問題集」というより「評論」ですね。
問題解かずとも、十分読み応えのある
良書だと思います。
今日の一冊は「本が好き!」プロジェクトからですね。
私はここ2ヵ月程ご無沙汰してしまっています。
国語力の乏しい私にとって、今回の本はとても魅力的です。
>受験生はもちろんだが、大人が読むと一層おもしろいだろう。
学生向けだけでないようですね。
私もブログなどを書くようになってから、
国語力の必要性をひしひしと感じています。
話し言葉と、書きことばは全く違うことも分かりました。
書き言葉は国語力がないと、自分の思いが表現しきれません。
そう言った意味でも今回の本は非常に役立ちそうな気がしました。
私も読んでみたいと思います。
今回も良書の紹介、ありがとうございます。