大学時代からずっと愛読し続けてきた曾野綾子。
一人さんや正観さんの世界とはちょっと趣が異なる。
それは彼女が「鬱」を経験し、それを乗り越えてきた、
経験があるからなのかもしれない。
無条件に、また無尽蔵に温かいわけでなく、
その根底にヒヤリとした厳しさを感じることは確か。

眼光鋭い曾野の冷静な視点は、表面的な「優しさ」
とは一味違う、奥深い人生の陰翳を醸し出してくれる。

以下の8つのテーマに沿って、
膨大な曽野の作品から数々の名言を引用する。

各章から無理やり一つだけ選択してみる。
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<眠れないとき>
「まあまあ」は本質的に優しい言葉だ。
労りもあるし励ましもある。
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<人間関係に悩むとき>
好きになれない人はどうしてもできてしまうだろうが、
その人をいらないと思うことは高慢なのである。
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<心が疲れたとき>
たとえば、偉大な人やことがらに感動できるのも一つの才能だが、
くだらないことを楽しめるのも、やはり才能だと思うことにしよう、
と決めていたのである。
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<自信を失ったとき>
自分の中に、動物みたいな部分と、
優しい気高い部分と、両方が確実にあると思えれば、
人間は大きく間違えないでいられる。
だけど、たいていの人が、自分はどっちかだと
決めてかかるからおかしくなるんだ。
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<健康と病気を考えるとき>
体や心に病気を持っている人は、
しばしば周囲の人の中から聖性を引き出します。
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<生と死を考えるとき>
不備を不備でなくそうとすると別の不備が出る。
一生というのは不備を生きることなんだ。
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<不幸と幸福を考えるとき>
幸福というものは客観的な状況ではなくて、
幸福を受け取る者の能力にかかっている。
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<本当に強くなりたいとき>
ただ会いたいと思うときに会え、
話したいと思うときに時間を割いてくれ、
病気の時には深く心に思い、
そして男と女の関係を越えて、
礼儀を守りつつ心の傷も話し合える人を
友人として持つのが本当の人脈だろう。
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1ページに1フレーズずつ記されていて、
非常に読みやすい。
どの言葉を引用するかは、編集者の意図なのだろうが
昔自分が原作を読んだときにノートにメモした言葉と
同じモノを見つけるとなぜか嬉しくなる。(^_^)

全部で200ページにも満たないが、
曽野哲学のエッセンスは見事に描いている。

彼女の言葉に久しぶりに触れて、背筋が伸びた気分。(^^)V

2009年度ブックレビュー#2