私が宮城谷昌光を知ったのは、「風は山河より」から。
これと「新 三河物語」しかまだ触れたことはなく、
まだ数年のお付き合いしかない。

それ以前に書かれた膨大な中国の歴史にスポットを当てた
作品群の中からテーマに沿った数々の名言を集めた本が
あることを知って早速読んでみた。

歴史のしずく - 宮城谷昌光名言集 (中公文庫)歴史のしずく - 宮城谷昌光名言集 (中公文庫)
著者:宮城谷 昌光
販売元:中央公論新社
発売日:2005-05-26
おすすめ度:5.0
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昔の作品はまだ1冊も読んだことがなく、
初めて読む言葉ばかりでとても新鮮だった。

たとえば「傲慢」は
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傲慢さは知恵を曇らせ、他人の知恵を近寄らせない。
自信満々な者に献じられることばは諛言(ゆげん)しかなく、
それは人格を低下させることばの毒である。
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また「知」は
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薬草であることを知る者にとっては有益な草ですが、
知らない者にとっては庭をよごす雑草のひとつにすぎない
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こうした言葉の宝石に出会える。(^o^)

しかし、本書の一番の醍醐味は予定外のところにあった。

それは「あとがきにかえて」。
最後の10ページほどに書かれている、
昔の思い出話。

著者が世に出るまで散々苦労したお金の話や
奥さんに苦労掛けるのが忍びがたく、
作家としての夢を諦めようかとする心の葛藤。
そうした苦悩の数々が木訥と、
しかし真摯に語られている。

これほどの大作家でもこれほどの苦労があったのか。
出身が地元だけに共感を持って読んできたが、
こうした苦労を知って益々好きになった。

次回作を大いに楽しみにしたい。

2009年度ブックレビュー#25