メディカルエンターテイメント作家、海堂尊氏の作品。
私にとっては『チームバチスタの栄光』
『ジェネラル・ルージュの凱旋』に続く3冊目。


ジーン・ワルツ
  • 海堂尊
  • 新潮社
  • 1575円
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現役の医師として、「不妊治療」を中心に
現実に直面する医療問題を取り上げ、
そこに娯楽性を盛りこんで、
一般人にもわかりやすく問題意識を喚起する。

ただ、ミステリーとは言え、先の2冊とは趣が大きく異なる。
ひとことで言うと、「殺人」の犯人探しでなく、
「誕生」に絡むミステリー。

ミステリーの苦手な私でも読み始めたら止まらない。
保険の利かない体外受精の手技代は一回30万円前後。
受精率を上げるためにオプション追加すれば、たちまち費用は50万円に跳ね上がる。
着床しなければ、それらはすべて無に帰す。
つまり人工授精とは、リッチでなければ選択しえない治療なのだ。(P73)

不妊治療は費用がかかることは聞いていたが
まさかこんなに高いとは!?
こんなプチ知識が散りばめられているので
全く飽きずに読み進められる。

大学医学部内の権謀術数、
厚労省の的はずれな制度改革により崩壊する地域医療等、
読みどころ満載。
さらに健康な子どもが生まれることが
奇跡的な僥倖であることも思い出させてくれる。
ところどころ強い主張が全面に出すぎて、
反対意見の側からは気色ばむところもあるかもしれないが、
問題点をあぶり出してくれていることは確か。

ミステリーを交えた、医療ドキュメンタリの色濃厚。
最終章でのタネあかしも鮮やか。
思わず膝を打つ。

複雑な人間関係を絡ませた上での殺人事件の謎解きには
私は全く興味はないが、この手の未知なる分野の知識を
娯楽色豊かに提示してくれる小説は大歓迎。

海堂尊氏には今後も楽しませてもらえそうだ。(^-^)

2010年度ブックレビュー#058