生物と無生物のあいだ
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「動的平衡」をコア概念に、
生物の特徴と不思議さを絶妙なレトリックで
興味深く描き切っている。
生物学者でありながらも、
文体の美しさと表現技法の巧みさは
凡庸な作家を遥かに凌ぐ。
全15章からなるが、その章タイトルも
抒情的視座に富んでいる。
例えば・・・
第8章 原子が秩序を生み出すとき
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
第15章 時間という名の解けない折り紙
硬軟織りまぜて、生物学の知的空間へ我々を誘う。
専門的な解説も興味深いが、下っ端の学者の苦労話、
形而下学的な話も楽しく読めた。(^-^)
印象に残っているのはこの戯れ言。
博士号とかけてなるほどね〜(^^;)
足の裏についた米粒と解く
そのこころは
とらないとけったくそ悪いが、
とっても喰えない
当然のことながら、「学問ノススメ」で聴いた内容より
広範かつ深遠に展開しており、
あの番組を楽しめた方なら面白く読めること必至。
アマゾンのレビューの中には、本書が題名ほど
専門知識が書かれていない事を非難する向きもあるが、
元々、講談社BOOK倶楽部:読書人の雑誌−本 の連載であることを知れば、そんな批判が的はずれであることがわかるだろう。
私もこの雑誌を学生時代、定期購読していたが、
読書好きな人のための公約数的な話題を提供する雑誌である。
特殊な読者層を対象にしていない。
理科系の話にもちょっと興味のある、
文系頭の私のような人間にはピッタリの本。
福岡先生を追いかけたいと思わせる一冊。
2010年度ブックレビュー#064
コメント
コメント一覧 (2)
> 全くの科学的な内容なのに
> それを忘れてしまうことすらある文章で、
> ウィルスや遺伝子のことをとても興味深く読めました。
そうなんですよね。
科学的な内容をこれだけ文学的に語れるって言うのは
本当にすごい能力だと思います。
> 逆に番組をとても面白く聞くことが出来ました。
> 文章もさることながら話もとても上手ですよね。
口語表現も豊かでしたね。
比喩の使い方がとてもわかりやすくて
感動的でした。
> さすが読書家のとがさんです。
> 私はこのような雑誌があることを今はじめて知りました。
各出版社が独自に発行している小冊子で
無料かせいぜい一部150円程度で新刊本の
紹介やエッセイが読めてそれなりに楽しめましたよ。(^-^)
私もこの本読みました。
とがさんがおっしゃるように文章が上手で、
今でもその印象が強く残っています。
全くの科学的な内容なのに
それを忘れてしまうことすらある文章で、
ウィルスや遺伝子のことをとても興味深く読めました。
>あの番組を楽しめた方なら面白く読めること必至。
私は本の方を先に読みましたので、
逆に番組をとても面白く聞くことが出来ました。
文章もさることながら話もとても上手ですよね。
>私もこの雑誌を学生時代、定期購読していたが、
さすが読書家のとがさんです。
私はこのような雑誌があることを今はじめて知りました。
「生物と無生物のあいだ」はこの雑誌に掲載されていたものを
まとめたものだったんですね。