メディカルエンターテイメント作家、
海堂尊氏の作品。
ジーン・ワルツ』に続いて、
この夏2冊目の海堂作品。
 医学のたまご(ミステリーYA!)
海堂 尊
理論社 ( 2008-01-17 )
ISBN: 9784652086209
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

主人公は14歳・中学生の薫。
潜在能力試験で全国一位を取ってしまったことから
東城大学医学部で研究するハメになる。
日本一といっても、実はその能力試験問題を作成したのが
世界的なゲーム理論学者である彼の父で、
事前に問題を知っていたからこその一位。
決して本当の実力ではない。(;´▽`A``

現実と虚像とのギャップが大きすぎるとき、
しばしばそこに喜劇と悲劇が生じる。
本作では俗物の塊である藤田教授が絡むことにより、
事態はより複雑に悲劇的に傾斜していく。

スポットライトを浴びるときには前面に出たがり、
問題が生じたときに裏に隠れて周りに責任転嫁して
恥ずかしげもなく生きている俗物がいる。
どの集団にもいる藤田教授のような人間。
私のような狭い社会でしか生きていない人間でさえ
以前勤めていた会社で同類の人間を上司にもったことがある。

激しい雨の中、合羽着て自転車で一時間走ってきた後、
汗と雨で体がびしょ濡れになって服が体にまとわりつき
なかなか着替えることができない時のような不快感。
そんな人間と会わずに済むだけでも自営業は
ツクヅクありがたいと思う。。。
が、これは余談。

本作では、最終章で薫の父の華麗な波状攻撃によって
悪代官藤田教授は完膚なきまでに叩かれ、
我々は溜飲を下げることができる。(^_-)v

ここでは勧善懲悪が貫かれたが、
大学、しかも医学部という象牙の塔では、
いまだ同種の不条理は多いと聞いている。

海堂氏の作品には必ず医療行政・医療問題に対する
何らかの問題提起がなされているが、
今回は大学医学部内の固定化したヒエラルキーに
スポットが当てられている。

先日読んだ、「生物と無生物のあいだ」にも
類似の記述があったので、
おそらくどこの大学でも同じような現実が見られるのだろう。

また各章の最初に短い警句が掲げられている。
それがなかなか鋭い。たとえば、
悪意と無能は区別がつかないし、つける必要もない。(P159)
全部で12こ。
これを読むだけでも面白い。

本作品はもともと中高校生用に向けて書かれただけあって、
舞台も中学と大学内のみで非常に読みやすい。
しかし、中味はなかなかドロドロしており、
大人でも十分楽しめる(!?)。
第一級のメディカルエンターテインメントに仕上がっている。

中高生の読書感想文用の本にどうでしょう!?
ちょっと遅いかな。(^^;)

2010年度ブックレビュー#069