久しぶりに心震える小説に出会う。
まず、文体が小気味いい。
漢語を多用し、短文で畳み掛ける。
漱石のそれを彷彿させる。
主人公は、信州にある「24時間、365日対応」の病院に勤務する。
専門は内科医だが、地方都市の総合病院では
そんな悠長なことは言っていられない。
昼間の「内科医」の名札を夜間には「救急医」に付けかえて、
何でも対応する。いや対応せざるを得ない。
私の田舎でも、医者不足の問題は深刻。
市民病院は慢性的にベッド不足で、
入院すべき患者さんも早々に退院を余儀なくされる。
隣市はさらに深刻。
市民病院そのものがすでに緊急患者の
受け入れ拒否しており、救急車で30分以上かけて
わが市まで患者を運んでくる。
すでに飽和状態を超越している。
同じような状況下で働いておられる臨床医の方々の
苦労の実態を見事に描き出している。
それもそのはず。
著者自ら、信州大学卒業後、長野市内の地域医療に従事する、
現役の勤務医。
病院の現場で起こっているリアルな小ネタには
全く困らないはず。(笑)
厳しい地域医療の絶望的現実に折れてしまいそうになる一方で、
天使のような患者さんとの心温まるエピソードに心洗われる。
人には向き不向きがある。
大学で最新鋭の機器で最新医療の研究に携わるのが
向いている者もいれば、主人公のように
理想とは程遠い現場にいながらも、生の患者と触れ合い、
自分のできる範囲内でベストな治療を施すことに
喜びを見いだす者もいる。
私も後者を選びたい。
畑は全く異なるが、管理職となるよりも
生涯現役で現場に立っていたいと思う。
重いテーマを扱いながら、心温まる読後感。
本書は著者・夏川草介の処女作。
この作家は今後も追いかけていきたいと思う。
2009年度ブックレビュー#108
まず、文体が小気味いい。
漢語を多用し、短文で畳み掛ける。
漱石のそれを彷彿させる。
主人公は、信州にある「24時間、365日対応」の病院に勤務する。
専門は内科医だが、地方都市の総合病院では
そんな悠長なことは言っていられない。
昼間の「内科医」の名札を夜間には「救急医」に付けかえて、
何でも対応する。いや対応せざるを得ない。
私の田舎でも、医者不足の問題は深刻。
市民病院は慢性的にベッド不足で、
入院すべき患者さんも早々に退院を余儀なくされる。
隣市はさらに深刻。
市民病院そのものがすでに緊急患者の
受け入れ拒否しており、救急車で30分以上かけて
わが市まで患者を運んでくる。
すでに飽和状態を超越している。
同じような状況下で働いておられる臨床医の方々の
苦労の実態を見事に描き出している。
それもそのはず。
著者自ら、信州大学卒業後、長野市内の地域医療に従事する、
現役の勤務医。
病院の現場で起こっているリアルな小ネタには
全く困らないはず。(笑)
厳しい地域医療の絶望的現実に折れてしまいそうになる一方で、
天使のような患者さんとの心温まるエピソードに心洗われる。
人には向き不向きがある。
大学で最新鋭の機器で最新医療の研究に携わるのが
向いている者もいれば、主人公のように
理想とは程遠い現場にいながらも、生の患者と触れ合い、
自分のできる範囲内でベストな治療を施すことに
喜びを見いだす者もいる。
私も後者を選びたい。
畑は全く異なるが、管理職となるよりも
生涯現役で現場に立っていたいと思う。
重いテーマを扱いながら、心温まる読後感。
本書は著者・夏川草介の処女作。
この作家は今後も追いかけていきたいと思う。
2009年度ブックレビュー#108