Ordinary

日常生活の些細なことに幸せの種を見つけて楽しんでいる平凡なオヤジの視点

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5
これまでもわが知的好奇心を大いに刺激してくれた、
大のお気に入りPodcast、
ラジオ版課外授業プログラム「学問ノススメ」。
本年度は特に私の感性に合う番組が多い気がする。
1ヶ月以上前になるがこの回も非常に面白かった。

山根一眞(ノンフィクション作家)[2010/9/5放送]

小惑星探査機はやぶさの打ち上げから地球帰還までの
7年間をウラ話を交え、科学的知識を非常にわかりやすく
解説してくれている。

「はやぶさ」の大きさは1.5メートル四方の
サイコロ状であるとか、
小惑星イトカワの大きさがちょうど東京駅の長さと
同じくらいであるとか、比喩が身近でわかりやすい。

著者の深い知識と「はやぶさ」に対するこの上ない
愛情が言葉の端々に感じられる。

今回のプロジェクトが宇宙探査の世界記録を
次々と塗り替えた、大ミッションだなんて、
この放送を聴くまでは不覚にも知らなかった。(;´▽`A``

アメリカの1/10しか予算のない日本の宇宙工学。
予算不足は日本人の叡智の限りを尽くして補い、
数々のトラブルと難題を次々解決していく。
その様は石油危機を省エネ製品で乗り越えた姿に重なる。

このPodcastはそのまま中学生の理科の授業でも
使用できるだろう。説明は簡にして要を得ている。

もう少し詳細な事実を確認したければ、
以下の著作もある。


関係者のインタビューを中心にまとめられているので、
一層興味をそそられる。

暗い話の多い日本社会の中で、
日本人としての誇りと喜びを取り戻せる一冊。

時間のない方はPodcastだけでも聴かれるといいだろう。
概要は十分知ることができる。(^-^)

2010年度ブックレビュー#074


5
昇一先生の「日本人のための日本の歴史」を語り尽くす
シリーズの第5弾。今回は戦国時代。


本シリーズは近現代から古代に遡って発刊されているのが特徴。
既刊は、
1.戦後篇「混迷の時代に」
2.昭和篇「昭和の大戦」への道
3.明治篇 世界史に躍り出た日本
4.江戸篇 世界一の都市 江戸の繁栄

いよいよ戦国時代。
信長と秀吉。特に秀吉を中心に語る。

家康を含めたいわゆる「3英傑」の中では
昇一先生は、秀吉を一番高く評価しておられる。
信長の持つ狂気ともいえる破壊さもなく、
家康の持つ陰湿ともいえる因循さもない。
両者にない「明るさ」を根底にもっている点が
日本型指導者として一番である、と。

晩年になって秀頼誕生以後、まさに晩節を汚す
格好になってしまった秀吉を十分承知しつつも
それでも数々の逸話を引用しつつ
秀吉の偉大さを証明してみせる。
いつもの博覧強記で我々を楽しませてくれる。
小説でないのに小説を読んでいるかのような
錯覚に陥る昇一先生独特の筆法である。

尚、昇一先生「豊臣家であれば鎖国をしないから、
大東亜戦争は不要であったろう」と
小学6年時の作文ですでに「秀吉論」を書いたそうな。

栴檀は双葉より芳し、というべきだろう。(^-^)

次回は、中世篇「日本人の中の武士と天皇」。
11月配本。
いよいよ本シリーズも佳境に突入。

2010年度ブックレビュー#073

5
著名な受験評論家である和田秀樹氏の初監督作品。


題名の通り、「受験」がテーマ。
全体の6割。
それ以外に、「緩和ケア」が3割。
「淡いラブストーリー」の要素も1割ほど占める。
どれも私の関心事なので、非常に興味深く鑑賞できた。

主人公である生徒役に寺島咲、塾講師役に豊原功補
おふたりとも派手さはないが演技は非常にうまく、
どちらも役柄にピッタリはまる。
すんなり感情移入できた。キャスティングの妙。

とくに大きなヒネリも予想外の展開もないが、
数々の受験テクニックや心構えは
受験を控えた者には大いに参考になるだろう。

それでも2時間という上映時間の絶対的な制約から
描ききれなかった受験テクニックをどうしても
伝えたいという思いで、映画製作後にそれを
小説として補足、出版している。

受験のシンデレラ
  • 和田秀樹
  • 小学館
  • 540円
Amazonで購入


この原作があって映画化されたものではなく、
映画の脚本を元に、情報を新たに補充追補して
小説を書いたという点は珍しいパターンだと思う。

小説も読んでみたが、確かに受験のテクニックが
小説のほうが緻密に書かれており、
「受験」に興味のある人には小説の方もぜひお薦めしたい。

ただ、少女と塾講師の出会いまでがやや冗長の感あり。(^^;)
映画とは出会い方が微妙に異なるが、大きな影響はない。
映画で大まかな人間関係が理解できていれば
最初の部分は割愛し、実際に講義の始まる95ページから読むのが
時間の節約になるだろう。

内容的には「ドラゴン桜」と重なる部分も多いが、
「死」が絡む分、こちらの方が全体としては重い印象を残す。
映画も小説も個人的には十分合格点を付けたい。

初監督にして、ここまでの作品に仕上げた、
和田監督の力量はお見事と言う他ない。

「受験」「勉強」をメインにしながらも、
本作のようなエンターテイメント性も兼ね備えた、
「青春受験小説」とも言うべき分野を
和田さんには開拓していただくことを切に願いたい。(^-^)


2010年度ブックレビュー#072

5
著者は教師生活50年以上。
主に小学校の教壇に立ち、子どもたちを
「追求の鬼」と育てることを無上の喜びとされた。
先生の「現時点で持っている考えのエキス」
がすべて詰まっている本。
教え上手
有田 和正
サンマーク出版 ( 2009-12-16 )
ISBN: 9784763199775
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


「教え上手」になるための2つの軸が必要、と説く。
わかりやすく、教わる側が学びたいと思える「技術」と
生徒を思いやる心とユーモアを備えた「人間性」の2つ。
その2つの柱を高めていくための方法・心構えを
半世紀以上にわたる教師生活から得た多くの実例をあげて
わかりやすく解説していく。
単なる理論でなく、実践者としての発言だけに説得力抜群。

「技術」の最重要ポイントは「いかに教えないか」。
つまり、教えすぎないこと。
全く同感。
教師は私を含めて基本的に教えることが大好きなので、
ついつい教えたがる。
しかし、それでは生徒の力にならない。
本当に必要なのは
「自ら伸びようとする」姿勢や考えを身につけさせること
であると、喝破する。

また、「わかった!」7割、「はてな?」3割
が理想的な授業配分。
はてな?を3割残して次へつなげるところがミソ。
なるほど。φ(.. )メモシテオコウ

笑いを最重要と捉えている点も大賛成。\(^o^)/
「一度も笑いのない授業をした先生はただちに逮捕する」
とまで述べている。
自分が笑えないのに面白く教えることなどできない
蓋し名言だろう。

その他にも数々の名言あり。
付箋だらけになってしまった。(笑)
教え上手


本書を書き終え、自分の考えや思想を書き尽くした
満足感と充実感で一杯であると述懐されている。
自らそう断言するほど本書には
先生の理論のエッセンスが詰め込まれている。
その一部をまとめてくださっている方もいる。

教育関係者必読の一冊であることはもちろんではあるが、
職業的教師でなくても子を持つ親御さんにも
多くの役立つ視点を提供してくれるに違いない。

後期授業の直前に本書のような名著に出会えたのは幸運だった。
ぜひとも授業に活かし、もうワンランク上の授業を目指したい。(^-^)

2010年度ブックレビュー#071

5
私自身は決して「過労死」が頭をよぎるほど
多忙な生活を送っているわけではない。(笑)
むしろ晴耕雨読の悠々自適に近い。
ただ最近、知り合いが「鬱病」になったため、
ちょっと読んでみる気になった。



章別タイトルは以下の通り。
1 過労死するタイプとは?がんになりやすい職業とは?
2 もし「自殺」の二文字が頭に浮かんだら…
3 七人に一人がかかるうつ病は「心のかぜ」です
4 うつ病とは何か?自殺につながる前兆とは?
5 ものの見方が狭くなるから悲劇が起きるのです
6 脳の構造が証明する男の限界と女の優位さ
7 食・運動・思考…今日から人生の軌道修正

なかなか衝撃的なタイトルが続く。(^^;)

医学的な見地から、鬱病になりやすいタイプや
ガンになりやすいタイプ等のチェックリストが
挙げられているので、心配な方はやってみるといい。

純粋に学問的な話ばかりでなく、
「日本笑い学会」副会長の肩書きをもつ著者だけあって
笑いのネタがアチコチに散りばめられている。
大笑いしながら、医学的知識も学べる、
一粒で二度美味しい本。(^-^)

年間の交通事故死者数(約5000人)のおよそ6倍の
自殺者数(約30000人)を抱える日本。
物質的にこんな満ち足りた国でこの数字は何かが狂っている。
これまでの尺度とは根本的に異なる、
心のフレームワークの再構築が必要だろう。
本書はその大いなる助けとなるに違いない。

尚、本書は2000年、すなわち、
今から10年前にすでに出版されている。
今読んでも全く古さを感じないどころか、
時節にピタリ適った提言がなされている。
事態が全く改善されていないことを嘆くべきか、
著者の慧眼を懼れるべきか!?
多分、両方だろう。

ストレス過多の現代人必読の書と言ってよい。

2010年度ブックレビュー#070

5
メディカルエンターテイメント作家、
海堂尊氏の作品。
ジーン・ワルツ』に続いて、
この夏2冊目の海堂作品。
 医学のたまご(ミステリーYA!)
海堂 尊
理論社 ( 2008-01-17 )
ISBN: 9784652086209
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

主人公は14歳・中学生の薫。
潜在能力試験で全国一位を取ってしまったことから
東城大学医学部で研究するハメになる。
日本一といっても、実はその能力試験問題を作成したのが
世界的なゲーム理論学者である彼の父で、
事前に問題を知っていたからこその一位。
決して本当の実力ではない。(;´▽`A``

現実と虚像とのギャップが大きすぎるとき、
しばしばそこに喜劇と悲劇が生じる。
本作では俗物の塊である藤田教授が絡むことにより、
事態はより複雑に悲劇的に傾斜していく。

スポットライトを浴びるときには前面に出たがり、
問題が生じたときに裏に隠れて周りに責任転嫁して
恥ずかしげもなく生きている俗物がいる。
どの集団にもいる藤田教授のような人間。
私のような狭い社会でしか生きていない人間でさえ
以前勤めていた会社で同類の人間を上司にもったことがある。

激しい雨の中、合羽着て自転車で一時間走ってきた後、
汗と雨で体がびしょ濡れになって服が体にまとわりつき
なかなか着替えることができない時のような不快感。
そんな人間と会わずに済むだけでも自営業は
ツクヅクありがたいと思う。。。
が、これは余談。

本作では、最終章で薫の父の華麗な波状攻撃によって
悪代官藤田教授は完膚なきまでに叩かれ、
我々は溜飲を下げることができる。(^_-)v

ここでは勧善懲悪が貫かれたが、
大学、しかも医学部という象牙の塔では、
いまだ同種の不条理は多いと聞いている。

海堂氏の作品には必ず医療行政・医療問題に対する
何らかの問題提起がなされているが、
今回は大学医学部内の固定化したヒエラルキーに
スポットが当てられている。

先日読んだ、「生物と無生物のあいだ」にも
類似の記述があったので、
おそらくどこの大学でも同じような現実が見られるのだろう。

また各章の最初に短い警句が掲げられている。
それがなかなか鋭い。たとえば、
悪意と無能は区別がつかないし、つける必要もない。(P159)
全部で12こ。
これを読むだけでも面白い。

本作品はもともと中高校生用に向けて書かれただけあって、
舞台も中学と大学内のみで非常に読みやすい。
しかし、中味はなかなかドロドロしており、
大人でも十分楽しめる(!?)。
第一級のメディカルエンターテインメントに仕上がっている。

中高生の読書感想文用の本にどうでしょう!?
ちょっと遅いかな。(^^;)

2010年度ブックレビュー#069

5
我が人生の師・小林正観さんの最新刊。
啼かなくていいホトトギス
小林 正観
中経出版 ( 2010-08-11 )
ISBN: 9784806137849
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


「啼かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」織田信長
「啼かぬなら 啼かせてみよう ホトトギス」豊臣秀吉
「啼かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」徳川家康
3人の武将の特徴を表した有名な句である。
しかし、これらはすべて共通の大前提がある。
すなわち、「ホトトギスは啼くものである」

究極の心の自由人・正観さんはその大前提すら覆す。
別に啼かなくてもいいじゃん。
故に曰く、
「啼かぬなら 啼かなくていい ホトトギス」小林正観

この視点に立ち、「努力」「競争」の次元を超越した世界に誘う。

・幸不幸そのものは人生そのものには存在しない。
それはあくまで人間の側の解釈。
目の前に現れた「やるハメになったこと」を
ツベコベ言わずに淡々とこなしていけば
人生はそれで十分。
やるハメになったことは、換言すれば「天の意志」
であるから。

・人生は自分が投げかけたものを受け取ることになる。
「嬉しい」「楽しい」「幸せ」「ツイてる」と言っていれば
もう一度それを言いたくなる現象が現出し、
「不平不満」「愚痴」「悪口」「文句」を言い続ければ
ずっとそれを言いたくなる現象が目の前に現れる。

40年掛けて発見した、こうした「宇宙法則」の数々を
様々な例証を挙げながら解説する。
その根拠は、自らの過去の経験であったり、
またある時は空海やお釈迦様であったり、
話は縦横無尽に展開して、興味は尽きない。
膨大は読書量で博覧強記を誇るが、
その知識が知識にとどまらず、
すべて智慧にまで昇華している点が
正観さんの凡人ならざるところ。

ただ、正観さんはどんな時も「上から目線」の発言は一切しない。
その点が他の多くの自己啓発本と大きく一線を画す。
何度か実際に正観さんの講演会にも参加させて頂いたが、
そこでも偉ぶったところや仰々しいところは全くない。
聴衆に混ざれば誰が講師か生徒かわからない位。
それほど威厳はない。(笑)

「こう生きなさい」とは決して言わない。
「私はこんな風に愉快に生きています。同じようにしたい方はどうぞ」
という立場。
「かくあるべき」の教育者でなく、「こうやってます」の実践者。
正観さんにとっては人がやろうがやろまいが関係ないのだ。

尚、本書は『100%幸せな1%の人々』の第2弾と銘打っているが、どちらから読んでも問題はない。
特に拘る必要はないだろう。

大切なのは読んだ本人が実践すること。
ただそれだけである。

2010年度ブックレビュー#068

5
昇一先生の「日本人のための日本の歴史」を語り尽くす
シリーズの第4弾。今回は江戸時代。


本シリーズは近現代から古代に遡って発刊されているのが特徴。
既刊は、
1.戦後篇「混迷の時代に」
2.昭和篇「昭和の大戦」への道
3.明治篇 世界史に躍り出た日本

江戸時代は前近代的な「暗黒時代」という、
誤った風潮が一部にあるが、決してそんなことばかりでなく
庶民の目線から見ると非常に愉快な時代でもあったとする。
今回もまた教科書とは一味違った方向から日本史に光を当てる。

たとえば、田沼意次。
賄賂政治の代表で教科書では悪の権化のように書かれている。
しかし、彼の時代に何があったか?
洋学が栄えて『解体新書』が刊行されている。
近世日本文学の代表といわれる上田秋成の『雨月物語』、
俳諧では与謝蕪村が登場し、
国学では賀茂真淵が『万葉集』などの古典を研究し、
本居宣長は『古事記伝』を書いた。
塙保己一は日本の史書・文学を収集し『群書類従』を編纂した。
仏教では白隠禅師が出て、『坐禅和讃』を著して
坐禅を庶民に分かりやすく解説した。
その他にも狂歌も川柳も栄えた。一番江戸らしい時代。
「悪い」時代に、これほど楽しくかつ後世に影響を及ぼす
有意義なものが次々出るわけがない、とする。
けだし、慧眼だろう。

また、石田梅岩。
教科書ではほとんど顧みられない影の薄い存在。(^^;)
しかし、彼は商人の出ながら、仏教・キリスト教・儒教を修め、
庶民に勤勉・誠実・努力といった徳目を私塾で教えた。
江戸時代の庶民の識字率・教育水準の高さは
石田梅岩一派(石門心学)によるところが極めて大きい。
いわば、江戸時代の斎藤一人さん的存在。(^-^)
そんな彼にスポットをあて、評価する。
江戸時代の二大文化は「浮世絵」と「石門心学」で
あるとまで述べている。

二つだけ例を挙げたが、目から鱗の情報は枚挙に暇がない。
ページを捲るたびに展開される知の展覧会に歴史好きな人間は
小躍りせずにはいられまい。
ただ、固有名詞が怒涛のように出てくるので
歴史が苦手な方は一度目は詳細な人名は軽く流して
大まかに歴史の流れを掴むようにして読む方が得策かもしれない。

歴史は「点」でなく「線」で捉えないと面白くない。
その意味で、昇一先生の話は「物語」として
つながっており、読みやすく頭に入りやすい。
江戸時代の政治経済文化の大筋はこれ一冊読んでおけばOK!
今回も全く期待を裏切らない。

次回は「戦国時代」。9月配本。
待ち遠しい。
。('-'。)(。'-')。ワクワク

2010年度ブックレビュー#067

5
本が好き!様よりご献本頂いた。
いつもありがとうございます。(^人^)♪


くじけないで
  • 柴田トヨ
  • 飛鳥新社
  • 1000円
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書評


著者の柴田トヨさんは1911年生まれ。齢99歳。
プロ詩人というわけではなく、
90歳を過ぎてから、一人暮らしの退屈しのぎにと
息子さんから詩作を勧められたのがきっかけ。
産経新聞「朝の詩」に投稿をすると、
選者の目に留まり、今回の出版となったという。
そんなドラマティックな展開が本当に世の中に
あるものなんだ!?

職業詩人ではないので、
妙な技巧やエキセントリックな仕掛けもなく、
とても素直に読める。
情景がそのまま目に浮かんでくる。

特に印象に残っているのは、
息子さんと一緒にご主人を駅に迎えに行き、
家族3人で歩きながら自宅に戻るまでを描いた「思い出2」(P80)
素直な心根と純真な感性が春風のように心地良い。
彼女もこれが一番のお気に入りだそうだ。

100歳近いご高齢で、尚且つこのようなみずみずしい
感性を保ちうるのはプロの詩人でも稀である、
と、選者の弁。
宜なる哉。

普通の生活を送る市井の方でも生き方次第で、
ここまでPureな精神を保ちうるのだ。
精神生活がいかに満たされているかは
巻頭の笑顔の写真が何より物語っている。
心が洗われる。

2010年度ブックレビュー#066

4
片山さつき
かんき出版 ( 2010-03-02 )
ISBN: 9784761266684
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


著者は片山さつき氏。
東大法学部卒、大蔵省(現財務省)入省。
その後、衆議院議員。
昨年の総選挙で落選するも
先月の参議院議員選挙で自民党比例代表で
自民党最多得票にて一位当選で国政復帰する。
ただ、本書は今年の2月、彼女がまだ当選する前
浪人時代に書かれた。

2005年のいわゆる「郵政選挙」で「刺客」として
送り込まれた一人。
ただこの経歴から見てもわかように、
エリート中のエリート。並の「刺客」でない。(笑)

本書では、民主党政権の政策の欠陥と誤謬を
論理明晰に説いていく。
現実の問題を解決する端緒として
7つの自立を提案している。
20年以上も財務省官僚として一線で
活躍していた頭脳からは数字が機関銃のように
飛び出す。
本当の「霞が関改革」は官僚の経験も十分にもつ、
彼女のような政治家でないと出来ない気がする。

日本経済を衰退から救う彼女の「7つの提案」
も傾聴に値するものだが、それより俗な私は、
表には出てこない小泉元首相の素顔の描写の方が
面白かったりする。(^^;)

政治は実践である。
理論だけで許されるのは学者だけ。
本書に書かれている理論を実際の政治で発揮できなくては、
政治家としては価値はない。
保守信仰の私としては、一刻も早く社会主義的傾向の強い
民主党政権から自民党の保守政権に戻り、
彼女の政策が実現されることを切に願う次第である。
再び国政復帰した片山氏は、「刺客」として当選した
衆議院議員時代より遥かに逞しく成長したことだろう。
今後とも彼女には注目していたい。(^-^)

2010年度ブックレビュー#065

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