Ordinary

日常生活の些細なことに幸せの種を見つけて楽しんでいる平凡なオヤジの視点

ブックレビュー2010

生物と無生物のあいだ5

ご存知、福岡伸一先生のベストセラー。
「動的平衡」をコア概念に、
生物の特徴と不思議さを絶妙なレトリックで
興味深く描き切っている。
生物と無生物のあいだ
福岡 伸一
講談社 ( 2007-05-18 )
ISBN: 9784061498914
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


生物学者でありながらも、
文体の美しさと表現技法の巧みさは
凡庸な作家を遥かに凌ぐ。
全15章からなるが、その章タイトルも
抒情的視座に富んでいる。
例えば・・・
第8章 原子が秩序を生み出すとき
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
第15章 時間という名の解けない折り紙

硬軟織りまぜて、生物学の知的空間へ我々を誘う。
専門的な解説も興味深いが、下っ端の学者の苦労話、
形而下学的な話も楽しく読めた。(^-^)
印象に残っているのはこの戯れ言。
博士号とかけて
足の裏についた米粒と解く
そのこころは
とらないとけったくそ悪いが、
とっても喰えない
なるほどね〜(^^;)

当然のことながら、「学問ノススメ」で聴いた内容より
広範かつ深遠に展開しており、
あの番組を楽しめた方なら面白く読めること必至。

アマゾンのレビューの中には、本書が題名ほど
専門知識が書かれていない事を非難する向きもあるが、
元々、講談社BOOK倶楽部:読書人の雑誌−本 の連載であることを知れば、そんな批判が的はずれであることがわかるだろう。
私もこの雑誌を学生時代、定期購読していたが、
読書好きな人のための公約数的な話題を提供する雑誌である。
特殊な読者層を対象にしていない。

理科系の話にもちょっと興味のある、
文系頭の私のような人間にはピッタリの本。
福岡先生を追いかけたいと思わせる一冊。

2010年度ブックレビュー#064

コルタン協奏曲5

本が好き!様よりご献本頂いた。
(^人^)感謝♪
まさか「本が好き!」でゴルゴに会えるとは
思わなかった。(笑)

ゴルゴ13
  • さいとうたかを
  • リイド社
  • 550円
Amazonで購入
書評


ゴルゴ13ほど好き嫌いが極端に分かれる劇画も
少ないのではないか。
私の友人で「ビッグコミック」を毎週買って
愛読している人がいるが、その彼は、
「ゴルゴ13だけは読まない」と断言する。
一方、私はコミックは苦手でほとんど読まないが
「ゴルゴ13」はその中の数少ない例外の一つで
ある時期まですべて買い揃えていた。
100巻を超えたあたりで挫折してしまったが・・・(;´▽`A``
それでもどこかの待合室に「ゴルゴ」があれば、
必ずそれを手にとって読む。

ゴルゴ13の面白さは、政治・経済のリアルな現実に
シンクロしている点だろう。
本書でも、携帯電話で使われるコルタンの違法採掘
で揺れるコンゴの内紛を扱っている。「コルタン協奏曲」
現実の社会問題を基軸に、超A級スナイパー・ゴルゴ13
の超人的狙撃を絡めて事件を大ドンデン返しの形で解決させる。
120%ありえないと知りつつも、
その非現実的解決が溜飲を下げる。

最後に、
アフリカの大地は、豊富な資源に恵まれて、
世界の工業生産に寄与しているが、
アフリカ自身が豊かになることはなく、
背後で操るものに利益を産む図式は
17世紀から変わらぬ状況である。(P.130)
と見事に締める。

硬派な話題ばかりではない。
最新のIT用語も飛び交う。
「ググれ」
ゴルゴ13
このアンバランスさが魅力。(^-^)

本書では、依頼者へのキャンセルの連絡を電子メールで送ったが、
着信確認できなかった。送った直後に依頼者のPCがウィルスに感染したのだろう、と推理している。(P.32)
今は連絡にも電子メールを使っているようだ。(笑)
ゴルゴだけにGmailを使っているに違いない。(;´▽`A``

硬軟織りまぜて、私の知的好奇心を満足させてくれる。
こんな劇画は他にない。
今後もゴルゴ13は読み続けていく。

2010年度ブックレビュー#063

子供が喜ぶ「論語」4

高校3年の時だったと思う。
現代国語の先生が最後の授業で、
君たちの一番好きな言葉を一人ひとり前に出て
発表するように、と言われた。
その時に私が発表したのがこれ。

「君子は言(げん)に訥(とつ)にして、
行(こう)に敏(びん)ならんことを欲す」

君子たる者は、自分の生き方は口先でペラペラ語るのではなく、
行動によって示そうとするものだ、
位の意味。論語の一節。

論語は10代から20代の私にとって最も大いなる規範だった。
大学生の時、宮崎市定先生の『論語の新研究』が
論語の解説書としては一番素晴らしい、と言われれば、
即飛んで買いに行ったものだ。

もし当時、昔の寺子屋のように、論語を読み、解説してくれる
教室があったら、喜び勇んで通ったことだろう。
まさにそれを実践しておられる先生の講義録がこちら。
子供が喜ぶ「論語」
瀬戸 謙介
致知出版社 ( 2010-05 )
ISBN: 9784884748852
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


論語から20節引用し、解説を加えている。
単なる字句の解釈にとどまらず、
現代社会の現象に照らして解説している点や
著者の主張が「教え」として色濃く反映している点が
いわゆるカルチャースクールの「論語を読む」
とは大きく趣を異にしている。
平成版の「寺子屋」なのだ。
実際に4歳の子どもも学んでいるらしい。

私的には、今では「論語」の生き方を目指してはいない。
残念ながら、それに従いたいとは思わない。
そうした生き方を立派だとは思うが、
自分の目標たりえない。
「正しさ」を追求する生き方は、
今の私には重く、息苦しい。
た「だ」しさよりた「の」しさを求めたい。
が、これはあくまで私の個人的嗜好。(;´▽`A``
本書の価値を下げるものではない。

学校での皮相的な字句の解釈に飽き足らない方、
学校の教科書以上の「論語」を学びたい方に
最適の「論語」入門書といえるだろう。

2010年度ブックレビュー#062

マンガでスイスイ「10歳のパソコン」15

本が好き!様よりご献本頂いた。(^人^)感謝♪


マンガでスイスイ「10歳のパソコン」1[ スゴイ技!]
  • かたりおん
  • 総合企画
  • 924円
Amazonで購入
書評


定石どおり、Windowsの基本操作から入り、
プリンタ・スキャナ等の周辺機器の使い方、
インターネットの活用法、
さらにセキュリティについての解説と
「10歳のパソコン」とはいえ、
幅広くひと通りの事柄は網羅している。

見開き2ページで1項目を解説する。
右ページに4コマ漫画。
左ページに詳しい解説。
詳しいと言ってもイラスト中心なので
10歳の子どもでも十分読める。

それでも「スクリーンショット」や「圧縮解凍ソフト」
さらに、Ctrl+C等の主な「ショートカットキー」までも言及する。
ブログやGoogle Earthの話題にまで触れているのはお見事。
(*゜▽゜ノノ゛☆パチパチ

「そこそこ」「まあまあ」「かんたん」の3つの
レベル分けがされているので、まずは「かんたん」
だけを読んでいくのが超初心者にはいいかもしれない。
基本用語の索引も付いて、
初心者への気配りが行き届いている。

題名どおり、「10歳の小学生」はもちろん、
その小学生にパソコンを教えなくてはいけない、
PCが苦手な先生方や、その小学生のお孫さんをもつ
シルバー世代にもオススメできる一冊に仕上がっている。
これで税込924円とは、
コストパフォーマンスは極めて高い。(^-^)

2010年度ブックレビュー#061

命の授業5

この動画をご存知でしょうか?


全く偶然にこの数ヶ月でこの動画に関連する番組に2つ出会った。
まずは6月に、Podcast「新刊ラジオ(第1144回)

これを聴いて興味をもち、読もうと思いつつ、読めずにいた。
すると、まるで読むことを急かすかのようにその1ヶ月後
アンビリバボー7/8日放送分」で、再び腰塚先生が登場。
これは読まないワケにはいかない。(;´▽`A``
早速読んでみた。
命の授業
腰塚 勇人
ダイヤモンド社 ( 2010-05-28 )
ISBN: 9784478012406
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


「鬼の腰塚」の異名をとった熱血教師がスキー事故により
頚椎を損傷し、医者から「一生車イス生活」を宣言される。
自分ひとりでは何もできないことに絶望し、
自殺未遂までもするが、妻や同僚、教え子の支えで
再び生きる希望を見出し、奇跡的回復を遂げるまでの
波乱万丈を描く。
その過程で人生観を180度転換し「5つの誓い」を立てる。

言葉にすると簡単だが、この境地に到るまでには
どれほどの深い絶望と暗い深淵を彷徨ったことだろう。
著者の苦悩は想像に余りある。

しかし、今はこう断言する。
「麻痺してあまり動かない右半身と下半身」は
私にとっての宝物です。
いつも私に、
「手足が当たり前に動くことの幸せ」を
教え続けてくれるから(P.81)

平凡な一日は実に非凡であること。
つい忘れてしまう。
普通な毎日こそ奇跡であることを。

「ありがとう」を言い続けていたら「ありがとうを言いたくなるような幸せな出来事」が起き始めた(P.116)
正観さん思想の正しさを証明してくれる人が
ここにも現れた。(^-^)

200ページにも満たない小著だが、
カラー写真を多用し、行間も広く
非常に読みやすい。
中学生にも読める。
若いうちにこんな良書に触れておけたら、
一生の財産だろう。

人生に行き詰まった方も読むといい。
何もしなくてもいい。
生きているだけで、人は誰かを幸せにしていることを
きっと気づかせてくれるから。

2010年度ブックレビュー#060

これが東大生・京大生の部屋だ5

東大生・京大生の部屋をカラー写真満載で
紹介した異色の一冊。

これが東大生・京大生の部屋だ!
  • 朝日奈ゆか
  • 扶桑社
  • 1575円
Amazonで購入


部屋の写真以外にもインタビューで
高校生活の様子や勉強方法、模試の判定など
受験生の興味ある事柄を質問し、
それに学生諸君が真摯に答えている。
昨年読んだ『東大合格生のノートはかならず美しい』の部屋版と言えよう。

私も受験時代、合格体験記の類は大好きで、
私の東大合格作戦
を何年間分も読んだものだが、当時こんな本があったら
貪り読んだことと思う。(笑)

部屋の様子も興味深いが、それ以上に興味をそそるのは
彼らの高校(浪人)生活。
模試の判定がどんなに悪かろうと、
皆「当然合格するものと思っていた」と語っている点。
根拠のない自信が大切であることを痛感。

さらに「良い刺激を与えてくれる友」の存在が必須であること。
「すべてがあなたに丁度いい」法則に従えば、
自分自身も周りに刺激を与える人間である必要があるだろう。
私自身は高校選択で失敗した苦い経験があるので
それを活かして息子には自分のレベルにあった高校
に行って欲しいと思う。
「コイツはスゴイ!」と思える友が近くにいる環境は
育ち盛りの若いときには特に必要だろう。

尚、「東大生」「京大生」と銘打っているが、
全体の80%は東大生の話。
京大志望の方はその点ご注意のほど。`

暑い夏。
ダレ気味の受験生諸君のモチベーションを高めるのに
一役買ってくれること請け合い。(^-^)

2010年度ブックレビュー#059

ジーン・ワルツ5

メディカルエンターテイメント作家、海堂尊氏の作品。
私にとっては『チームバチスタの栄光』
『ジェネラル・ルージュの凱旋』に続く3冊目。


ジーン・ワルツ
  • 海堂尊
  • 新潮社
  • 1575円
Amazonで購入


現役の医師として、「不妊治療」を中心に
現実に直面する医療問題を取り上げ、
そこに娯楽性を盛りこんで、
一般人にもわかりやすく問題意識を喚起する。

ただ、ミステリーとは言え、先の2冊とは趣が大きく異なる。
ひとことで言うと、「殺人」の犯人探しでなく、
「誕生」に絡むミステリー。

ミステリーの苦手な私でも読み始めたら止まらない。
保険の利かない体外受精の手技代は一回30万円前後。
受精率を上げるためにオプション追加すれば、たちまち費用は50万円に跳ね上がる。
着床しなければ、それらはすべて無に帰す。
つまり人工授精とは、リッチでなければ選択しえない治療なのだ。(P73)

不妊治療は費用がかかることは聞いていたが
まさかこんなに高いとは!?
こんなプチ知識が散りばめられているので
全く飽きずに読み進められる。

大学医学部内の権謀術数、
厚労省の的はずれな制度改革により崩壊する地域医療等、
読みどころ満載。
さらに健康な子どもが生まれることが
奇跡的な僥倖であることも思い出させてくれる。
ところどころ強い主張が全面に出すぎて、
反対意見の側からは気色ばむところもあるかもしれないが、
問題点をあぶり出してくれていることは確か。

ミステリーを交えた、医療ドキュメンタリの色濃厚。
最終章でのタネあかしも鮮やか。
思わず膝を打つ。

複雑な人間関係を絡ませた上での殺人事件の謎解きには
私は全く興味はないが、この手の未知なる分野の知識を
娯楽色豊かに提示してくれる小説は大歓迎。

海堂尊氏には今後も楽しませてもらえそうだ。(^-^)

2010年度ブックレビュー#058

泣いて生まれて笑って死のう5


泣いて生まれて笑って死のう
  • 昇幹夫
  • 春陽堂書店
  • 1575円
Amazonで購入


著者は麻酔科、産婦人科の専門医でありながら、
「日本笑い学会」副会長として 笑いの医学的効用を研究
されている風変わりな経歴の方。自称「健康法師」。

まず驚いたことは、正観さんの本で読んだ話が
次々出てきたこと。
なんば花月で新喜劇を見た後で患者さんの
NK細胞の活性化した実験の話。
離婚率が一番少ないのは遠洋漁業の漁師さんという話。
ガンになり易い職業。
臨死体験された方が神さまから
「楽しい人生であったか?」と質問される話など。
共通点が非常に多い。
また駄洒落やことば遊びがスキな点もよく似ている。(;´▽`A``

正観さんの名前は全く出ていないが、
正観さんと何らかの接点があるのではないか!?
正観さんはその膨大な読書量から、
歴史の話や医学の話も幅広く語られているが、
その医学系のブレーンのひとりがこの昇先生だと
勝手に推量している。

そう感じつつ、付録のCDを聴いてみた。
そうしたら「友人の小林正観さんが・・・」
のコメントあり。
やっぱりなぁ!!\(o⌒∇⌒o)/

文系の歴史の逸話などはないものの
その分、専門の医学系の逸話は多数。
食事の重要性を物語る話や抗うつ剤の恐ろしさを
伝える逸話など興味深い実話が次々飛び出してきて
飽きることなく読み進めることができた。

章別構成は以下のとおり。
第1章 人生のはじめ
第2章 共育と食育
第3章 なんのために生まれたの?
第4章 病いはもとからたたなきゃ
第5章 病いと向き合う
第6章 笑いの効用
第7章 人生の養生
第8章 人生のエンディング

た「だ」しさよりた「の」しさを重視した
生き方を推奨する。
「自分が何とかしなければ」を止め、
「誰かが何とかするだろう」と考え直すことで
癌になることを防ぐ。
クソマジメに生きて病気になっていたら
バカらしい。
程々にマジメに、程々に遊ぶ。
非マジメのススメ。

正観さんの視点を医学的見地からより深く
探求した著作。
正観さんの視点を持たない方には
目からウロコの衝撃的事実の連続だろう。

著者のホームページもまた愉快。(^-^)

2010年度ブックレビュー#057

学ぶ力を伸ばすお母さんの魔法4

個別指導専門塾・塾長さんによる学習指導法。

学ぶ力を伸ばすお母さんの魔法―子どもが中学生になったら読む本 個別指導歴20年の塾長が教える子どものやる気を引き出す方法
  • 谷澤潤
  • エル書房
  • 1365円
Amazonで購入


この手の書籍は、親が読んだあと子どもにも読ませて
そのまますぐに学習法が活かせる本と、
あくまで親目線で書かれた本で、
直接子どもが読むには馴染まない本がある。

前者はたとえば、「習慣を変えると頭が良くなる」や
子どもに教えてあげたいノートの取り方」などがある。
本書は後者。
子どもの成績は、お母さんの言葉で9割変わる!」に同じ。

同種の本が大概、難関大学・難関高校に
合格させるための効率的な成績アップの方法を
提示している例が多い。
ところが本書はこれとはちょっと趣を異にする。

それは著者が決して勉強が得意でない、
ことが一因かもしれない。(;´▽`A``
自分自身の体験を元に、
「勉強というのは大変な重労働である」
ことを大前提として生徒に臨む。
だから視線がいつもトップレベルより
中位から下位の子に向かっている。
その学力向上はお母さんが握っている、として
独自の理論を展開していく。

章別構成を見てみよう。
=======================
第1章 困った!子どもがなかなか勉強しない!
第2章 考えることのできる子とできない子
第3章 子どもの反抗を親子の幸せに変える方法
第4章 誰もやっていない、魔法の接し方
第5章 まちがった対処をしていませんか―子どものタイプ別対処法
第6章 学力と性格を考えて塾を選ぶ―塾選びのコツ
第7章 私の生きがい―なぜ私は、塾をはじめたのか
=======================
第5章「タイプ別対処法」では
どうしても勉強に向かない子には
勉強以外の道を見つけるべし、
と、教育に携わるものとしてはタブーとも
言えるヒトコトまで発している。(笑)
なかなか正直な塾長さんである。(;´▽`A``

塾の見方・選び方のコツも伝授する。
長く塾業界にいる者としては、それほど目新しい
情報ではないが、一般の方には新鮮な情報が
多いかも知れない。

全般的に、著者の知的正直さがにじみ出ており、
パッションにも共感を覚える。
成績が今一歩振るわず、子どもとの接し方を
模索しているような親御さんにお薦めしたい一冊。

2010年度ブックレビュー#056

刑事眼―伝説の刑事の事件簿5

本が好き!様よりご献本頂いた。
(^人^)感謝♪


刑事眼―伝説の刑事の事件簿
  • 三沢明彦
  • 東京法令出版
  • 1890円
Amazonで購入
書評


警視庁24時」というTV番組がある。
TVを余り見ない私が、録画してでも見たいと
思える数少ない番組のひとつ。
警察の裏側のご苦労を伝えるいい番組だと
思うが、TV的に面白おかしく演出する関係上
仕方のないことかもしれないが、
酔っ払いや暴走族絡みの映像が多いのが玉にキズ。
そんな下衆な行為は余り興味はない。
もっと職人のような刑事の地道な仕事ぶり
を知りたい、と思ってきた。
そんな好奇心を見事に満たしてくれる一冊。

顔写真だけを頼りに雑踏の中から指名手配容疑者を探し出す
専門の捜査官(見当たり捜査官)がいるなんて、初めて知った。
手作りの手帳に手配写真を貼り、細かい特徴が書き込み
毎日その写真とにらめっこするという。
そうやって数百人の顔を覚えてしまうという。
「正面の写真、横顔の写真。いつもいつも見とると
頭の中で立体的に見えるようになる。
昔からの知り合いみたいに、人込みの中でも
判別できるようになる(P112)」のだそうだ。
そうして年間100人以上を実際に逮捕してしまう
というのだから恐れ入る。

また「スリ」専門の捜査官の技も凄まじい。
スリが獲物をとらえるときに一瞬視線を落とす。
それを「眼が飛ぶ」という。
刑事たちは人込みの中でも眼が飛ぶ瞬間を見逃さない。
「眼が落ちる角度とその先だよ。角度は10度くらいかな(P130)」
「10度」・・・!?(;´▽`A``

名古屋駅の雑踏をこれまで無造作に歩いていたが
そうした中でも刑事と犯人との見えない攻防が
繰り広げられているとおもうと呑気に歩いていらない。(;´▽`A``

日本の治安低下が危惧され、
警察官の不祥事がマスコミをしばしば賑わすが、
刑事の大半は、本書で示されたような職人的勤勉さで
日々犯人と格闘し、そうした努力のおかげで
日本の治安は何とか保たれ、
我々は安全に暮らしていけるのだと思う。

普段は表に現れないが、社会の安全を陰で支えてくれている
方々の存在に気づかせてもらえる良書。

漢語を多用した硬派な文体も刑事の匠の技を伝えるのに
うまく適合している。
その点も最後に付記しておきたい。

2010年度ブックレビュー#055
プロフィール

本宮とが



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