現代国語で誰しもが学習した5作品を俎上にのせ、
「指導書」的読み方をブッた斬る。

大人のための国語教科書  あの名作の“アブない”読み方 (角川oneテーマ21 A 107)
小森 陽一
角川書店(角川グループパブリッシング) ( 2009-10-10 )
ISBN: 9784047102149
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

サブタイトルにある「あの名作のアブない読み方」とは
指導書に従わない読み方の意。
扱っているのは以下の5作品。
「舞姫」「こころ」「羅生門」「山月記」「永訣の朝」

いずれも有名な作品ばかりで、私も確かに現国で
学習したことを覚えている。
中でも山月記は漢語を多用した格調高い文体で
特に好きな作品の一つ。
主題である『臆病な自尊心』と『尊大な羞恥心』は
我々の仲間内では今でも時々冗談に使うフレーズ。(^-^)

さて内容は、指導書の一元的な見方に疑問を呈し、
多元的な見方の可能性を掲げる。
たった一つの「正解」を学校では教えられてきたが、
小説など読み方や感じ方など、読者の数だけあって
然るべきだし、そもそも指導書の「答」が「正答」である
根拠はどこにもない。
作者がかつて教えていた高校生の「意見」が載せられているが
その視点が斬新で面白い。

また余談的に語られる雑学が勉強になる。
「痔」という漢字が「寺」に「ヤマイだれ」がつく理由は
まさに目からウロコ。なるほど。(P.97)
これを知っただけでも本書を読んだ価値がある。

「こころ」の中に同性愛的側面が隠されている、
という指摘も初耳。
が、これはさすがに学校では語りにくい内容だろう。(^^;)

学校で習う内容は最大公約数的な事柄なので、
自分で興味ある分野を掘り下げていかねば、
何も身につかないだろう。
それは現国だろうと、英語だろうと、皆同じ。
学校の教科書の役割など、それ以上でもそれ以下でもない。

2009年度ブックレビュー#107