Ordinary

日常生活の些細なことに幸せの種を見つけて楽しんでいる平凡なオヤジの視点

タグ:野田城

「風は山河より」全五巻を読了した。



野田城主・菅沼定盈(さだみつ)とその一族を描いた物語。
野田城というのはここ↓

拡大地図を表示

近くにJRが通っている。実はこの線
高校に行くときに毎日使っていたが
そんな有名な場所とはつゆ知らず、
気にもとめずに毎日ボケタ〜〜ンと乗っていた。
無知というのは恐ろしいものである。

宮城谷昌光はこの飯田線から見える車窓風景を
「日本の沿線風景の中で十指に入るだろう」
と絶賛している。が、これは余談。

さて、本書の主人公・菅沼定盈。
教科書にも全く出てきていないが
戦国時代においては、垂名の人であったらしい。
それは、武田信玄3万の兵士に対し
わずか400人で野田城に籠城し
1ヶ月間堪え忍び、敵将信玄からも
殺すに惜しいと激賞された武士。

ここで1ヶ月も予定外の足止めを食い
精魂使い果たしたわけではないだろうが
上洛を諦める。
そのため、信長・家康は信玄と戦わずに済む。
そしてこの闘いの2ヶ月後に信玄は死に、
相対的に、信長の勢いが一気に増していく。
ということは、俯瞰的に見れば
家康への道をなだらかなものにしたとも言える。

その意味で第5巻の帯にある
「この男なくして徳川260年の太平はなかった」
という表現も決して大げさではない

物語は菅沼定盈とその父・祖父3代の三河の武士道
を描くことがメインテーマ。
ちょうど定盈と同時期に生まれた徳川家康と
その父・祖父3代の生き様を同時並行に
描くことによって、菅沼定盈の生き方の特徴を
一層際立たせている。

籠城している定盈一団に対し
雲霞のごとく現れた信玄の一団。
100倍の数に攻められ、当然のごとく「死」を覚悟する。
そのクライマックスシーンは鳥肌もの。

主人と家来とのやりとりを読んでいると
なぜか落涙が止まらない。
ある霊能者に見てもらったところ
私の背後には四〜五人の鎧を着た武士が
背後霊としてついていらっしゃるとのこと。
昔のことが思い出されるのだろうか!?

それにしても、宮城谷の文章は美しい。
「漢字」が大好きな私としては、
全5巻中に一語たりともカタカナを使わず
言葉の贅肉を一切そぎ落とした、
人間の心の襞に隠されたあらゆる感情生活を
すべて漢字で表現している宮城谷のそれは
愛する司馬遼太郎に比肩する。
司馬亡き後、全く読む気がしなかった歴史小説を
何十年ぶりかで読んだ。
全五巻読んでいる間、暑さも厚さも忘れた。

いや〜〜、生きててよかった!!
三河のド田舎で生まれたことを
心から感謝したい。

さぁ、次はダーマトグラフを引きまくって
ドッグイヤーを折りまくったページを全部読み直し
気に入った箇所をすべて入力してノートに
まとめるという愉しい作業が待っている。
「司馬遼太郎ノート」に続いて「宮城谷昌光」ノート
もできそうである。(^^)V

「風は山河より」」は私のこの夏最大のヒットであり、
最高のボーナスでした。(=●^0^●=)

◆昨夕帰宅してから、
ほぼぶっ通しで読み続け一気に読了。
風は山河より第一巻

必要最小限のことを除き、時間の
すべてをこの本にあてることができた。

机の前で読み、疲れると布団に寝転がって読み、
眠くなると昼寝をし、起きると再び読み始める。
そう。
四半世紀前、大学生だった頃、
一人下宿でそうやって私は
青春時代の何年かを過ごしていたのだった。

あの頃は司馬遼太郎で、
そして今度は宮城谷昌光で。

レビューでは登場人物や地名に聞き覚えのないものが多く、
その点苦労したという声が多いが、
この物語の舞台となった「東三河」に住む私にとっては
申し訳ないくらい身近なものばかり。(^_^)
読みやすい、読みやすい。

「野田城」は車で15分の所にあり
「長篠合戦」跡地には30分で行ける。
歩いて5分の所にある神社の名前まで
出てきたときには思わず感嘆の声をあげたほど。

400-500年前にこのあたりで実際に起こっていた
歴史絵巻をみせてもらっているようで
これで興味の湧かぬはずはない。

◆さらに宮城谷は本書の中に1文字の
カタカナも使っていない。
白川静先生を師とするだけあって
漢字の素養は桁外れ。
漢字の持つ表現能力を極限まで駆使している。

実際、辞書にない漢語もいくつも出てきた。
たとえば、「淡愁」。
おそらく「たんしゅう」と読むのだろうが
辞書にはない。
中国の熟語だろうか、宮城谷はしばしば使っている。
字面からその意味するところは大体想像できる。
「涼しい影」にも通じる、私好みのイメージでもある。(^o^)

また、宮城谷自身が愛知県蒲郡市出身のせいか
東三河に関してしばしば語ってくれる。
===========================
東三河は、東海地方では最高の文化の叢聚(そうしゅう)
というべき今川の文化圏にあり、
文武にひいでた牧野家をみてもわかるように、
文化程度は低くない。
むしろ今川の人文の光がとどかない西三河の方が
蒙(くら)いであろう。
文化とは伝統と想像の所産であり、
理知が情念を制御する場において成り立つ。
===========================
なんてことを読むと、その延長線上にいる私自身が
褒められているようで、つい口元もほころんでしまう。

さらに
===========================
三河で生きている者は、
農業を中心とする生活形態が思想の根幹にあり、
志のすえかたは、じみちな作業のすえに
秋の収穫を待つ心境に似ているので、
投機をふくむ商業という危険のはらんだ
実利的な契約世界に関心がない。
===========================
という三河人のDNAの解説までしてもらえると
自分自身を解説してもらっているようで
思わず膝を叩いてしまう。


◆本書において、家康の祖父「清康」の偉大さを
初めて知った。
帯にある「家康の天下統一は関ヶ原の七十年前から
始まっていた」の意味がよくわかった。

第一巻の最後で、その清康は非業の死を遂げた。
二巻はどういう展開になるのだ!?
早く読みたい!!
Livedoorブックスよ、早く送ってくれ〜〜

800円で時間を忘れるほど
丸々一日楽しませてもらった。
幸せだ。
愉しすぎる。。。

↑このページのトップヘ