非常に不思議な映画。

「異人」とは辞書では
「異国の人。外国人。特に、西洋人」とあるが、
この映画では「あの世の人」の意味する。

B級ホラー映画ばりのおどろおどろしいシーンもあるのだが、
見終えた後しばし呆然としまうほど余韻が残る。

異人たちとの夏 [DVD]
風間杜夫, 秋吉久美子, 片岡鶴太郎, 永島敏行, 名取裕子
松竹ホームビデオ ( 2009-01-28 )
おすすめ度:アマゾンおすすめ度


公私とも完全に行き詰まっている40男が主人公(風間杜夫)。
疲れ切った彼が、ふとした弾みで「時空のゆがみ(!?)」に
迷い込み、12歳の時に他界した両親(片岡鶴太郎・秋吉久美子)に再会する。
当時の姿のまま(つまり今の彼よりももっと若い姿)で現れ、
ごく自然に息子として受け入れ、一緒にキャッチボールしたり
花札したりして、家族団欒を味わう。

その温かな時間によって、精神は徐々に癒されていくが、
不自然な形での邂逅故、肉体はどんどんやつれ、蝕まれていく。
そのあたり、翌日のできごとを予知できる代わりに、
1回読むと100日ずつ命が縮む「恐怖新聞」の鬼形礼を彷彿させる。

周囲の心配と己自身の恐怖もあり、ついに両親との別離を決意する。
クライマックスは別れの「すき焼き屋」のシーン。
お互い最後の時がすぐそこまで来ていることを知っている。

「おれたちがいないのに、よくここまでやってきたな」
「あんたのこと、自慢に思ってるよ」


最後にそういって二人はゆっくりと消えていく。
完全に。。。
二人の言葉に自分が深く、確かに愛されていたことを実感する。
そして主人公は再び立ち上がり、歩き出すことを決意する。
・・・
というようなストーリー。

すき焼き屋のシーンは涙無しでは見られない。
一緒に見ていた嫁とともに号泣。(T.T)

無条件の親の愛。
愛おしい家族団欒。
70年代の懐かしい街並み。
曲がりなりにも人の子の親となり、
親と子の両方の気持ちを理解できる、
我々の世代には胸に応える作品だろう。

田舎に住み、母親と同居している私でさえ、映画を見た後
母に対していつもより優しくなれた。(笑)
故郷を離れ、両親と離れている方が見たら、
きっと故郷に飛んで帰り、
両親の肩たたきでもしたくなるのではないか!?
それくらい郷愁を誘う。

人は皆、無条件に自分を受け入れてくれる存在が必要なんだ
と、改めて思う。
自分がそうしてもらえたように、
我が子にもそう接してやりたいと思う。

尚、本作品は先日読んだ「恐怖と愛の映画102」で知った。
DVDを買おうと思っていた矢先、TVで放映された。
何というシンクロニシティ!!\(◎o◎)/!
この本を読まなかったら絶対見なかったであろうお昼12時の再放送。(^_^;)

画質が悪かったので録画を消してしまったのだが、
早くももう一度見たくて疼いている。
やはり、DVDを買おうと思う。

アラフォー、アラフィフ世代は必見。
胸にしみる。